茶壺
▲壺主 ざゞんざ、浜松の音(おと)はざゞんざ(酒宴の歌)。あゝ、いかう(大変)酔うたことかな。 ▲ふし めがゆくゆく、御目(おめ)がゆき候。扨も扨も、平常(いつも)は道が一筋あるが、あゝ、幾筋も見ゆる。これでは行かれまい。まずちつと、や、えいとな。あゝ、寝た。 ▲すり 罷出(まかりい)でたるは、心も直(すぐ)にない者でござる。さやうにござれば、此中(このじゅう)は何とを致してやら、仕合(しあわせ:めぐりあわせ、運)が悪(あ)しうござる。今日は昆陽野(こやの:伊丹市だそうです)の市に参り、何にはよるまい、さわたつて(かかりあうこと)、仕合を致さうと存ずる。いえ、こゝな、何者やら、道端に伏せつて居(お)る。行て見て参らうず。扨も扨も、寝て居るこそは道理なれ、はれ、きつう酔うて居る。見ればよささうなものを背負うて居るが、あれをば、どうぞこつちへつれましたいと存ずるが、まづ起して見ませう。やいやい、街道ぢゃが、起きて行かいでな。これは扨、賢いことをして居る。まだ片一方の連尺(荷物を負う具)を放さぬ。某(それがし)も、片一方を掛けて、彼処(あそこ)に伏せりませうず。、や、えいとな。(「茶壺」 狂言記) 酔って道で寝ていた、茶壺運びの背負い具の片一方にすりが体をかけたことから、争いとなり、目代に訴えたが、茶壺を目代にとられてしまうという狂言です。酒壺だったらと思うのですが…。
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